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現代の移動難民

2011.11.18

人間はその生涯を通じて何回か住み変える。職場の移動はむろん住居移動の原因となるが、ライフサイクルにおいて、結婚後しばらくのあいだ、子どもが生まれて家が狭くなったとき、さらに中学生になって個室が必要になったとき、子どもが独立したあとの老後といった生涯の時期によって、家族の住宅に対する広さ、立地、環境面での要求は変化する。一つの住居がすべての段階の住要求を満たすことができない現状では、住みかえは社会的必然となる。

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そこで、生涯における何回かの住みかえ説が唱えられることになる。しかしわが国の住居移動の現状は、住要求に応じて住みかえるといえば聞こえはよいが、むしろ“強制された住みかえ”という性格が強い。たとえば子どもができると出ていかねばならぬ木造アパートでは、大きなお腹を抱えて家探しに歩かねばならぬ。折よく募集のあった公営賃貸住宅に当選でもすればともかく、多くは家賃の払えるぎりぎりの住宅に移り住むだけであるから、子供が大きくなれば、すぐ次の引越しを考えねばならない。運よく公営賃貸貸家に入れた場合も、やがて狭さの問題は深刻となる。現在の住宅に永住する意志があるかどうか、という公団住宅居住者への質問に対して、永住希望は3DK住宅でも一五%程度にすぎない。持家については比較的、永住意志は強い。公団・公社分譲アパート居住者調査では、三五・七%が永住するとこたえている。しかし、狭さ、居住性の悪さ、管理に無関心な賃借人がふえたり売買が増大して、たえず人が入れかわる住みにくさ、将来の維持管理への不安といったことが、ふたたび移転への気持をはやらせている。住居を移さねばならぬことは、老年後も起こってくる。労働省労政局『定年到達者の就業と生活の実態』(一九七一年六月)によると、定年後、二三%のものが住所を変わっており、住所変更の理由は、七〇・七%が定年前には社宅に入っていたことをあげている。